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航空業界 H − 全日空ハイジャックの余波

 

Jan 8, 2000 

昨年7月23日、全日空61便羽田発新千歳行きのボーイング747−400型ジャンボ機がハイジャックされ当該機の長島直之機長が刺殺された事件。アメリカで第一報を聞いた時はショックだった。今まで日本の国内線で起こったハイジャック事件で犠牲になって亡くなられた方はいなかったはず、それも被害者が機長・・・航空業界で職を見つけることを考えている私にとって、本当に衝撃を受けた事件だった。

もちろん、コトは航空業界にとどまるものではなかった。機長不在でハイジャック犯がジャンボ機を「操縦」、そして八王子市上空付近高度200mまで急降下したという常識では考えられない異常事態。フライトシミュレーターという「仮想現実」で低空飛行をやってみたというのではない、「現実」の世界で白昼に起こった事件。単純計算はできないが、機体の回復操作があとほんのわずか遅れて市街地に墜落していたら、試算で乗員乗客517人を含む5000人近くの一般市民が犠牲になっていた。1人のハイジャック犯の犯した犯罪が社会に与えた影響は計り知れなく大きい。

全日空のある乗員は事件後「神が助けてくれたとしか思えない」と語ったそうだ。さまざまな「偶然」と「奇跡」が重なって、犠牲になられた長島機長に救われたこの事件。航空業界の怠慢とも言える対応が招いたこの事件。マスコミは事件直後からこの事件について詳しく報じていたようだ。日本にいたわけじゃないから詳しいことは言えないけど、コックピット内の「交信記録」の内容も早い時期から報道されていたと聞く。社会的な影響を考えると、マスコミが競うように報道したのはいつもの通りだ。

プライバシーの問題などを相変わらず無視しているという声が多い報道合戦が一段落したと思われた矢先、ネット上である「革新的」な報道がなされた。講談社がネットで提供している「Web現代」というサイト。このサイトの特集記事で「死傷者5000人の大惨事はこうして回避された」と題される特集がある。驚いたことに、この特集の中でリアルプレーヤーを用いて操縦席の「肉声」を公開しているのだ。

これには本当に驚いた。私のパソコンの設定ミスのせいか、未だ「肉声」を聞いてはいないが、こんなことをしてしまって良いものなのだろうか?もちろん、講談社は悪いことは何もしていない。事件の影響力、そして何よりも被害者になる可能性があった一般大衆側の「需要」があるからこそ、情報提供の合理的な一手段としてネットという手段を取ったにすぎないのだろう。でも・・・「知る権利」はあるのだろうけど、それが一概に正しいと言えるのか?やはりそこには被害に遭われた全日空長島機長のご遺族の方々やその他関係者の心情を配慮する必要性もあるだろう。ネットは便利な情報伝達手段であるばかりではなく簡単に「凶器」にもなり得る。一般に公開することが倫理的に許されることかどうか、価値観は人によって違うのだろうが考える必要はあると思う。

一時期、「東芝のアフターサービス問題」に象徴される「告発系サイト」なるものが流行した。双方向性の情報コミュニケーションの世界である以上、そういう流れになるのはある意味予想されたことだと思うのだが、「自主規制」も必要なのでは?全日空ハイジャック事件の「肉声」公開にしても、「後味の悪さしか残らない」という声も聞く。

誰もがアクセスできる世界だからこそ、それこそ「便所の落書き」レベルになってしまうようなことはすべきではない。これは個人に限らずマスコミも同じ。